Diary 浅見帆帆子の日々

October 2013

Vol.1

 10月はじめ、伊勢神宮が無事に「遷宮」されました。
 内宮で2日、外宮で5日に行われた遷宮の儀式、「遷御の儀(せんぎょのぎ)」に出席しました。
 感動してしまいました。 

外宮の火除橋で
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中に入ると撮影禁止なので、たくさん撮った(笑)
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 祭儀が始まり、まず印象的だったことは、一番はじめ、誰よりも先に、
新しい宮の建立にたずさわった宮大工の方々が進んでくる(参進してくる)ことでした。
 蘇芳(すおう)色の装束を身につけた宮大工さんたち……たしかに、この方々がいらしてこそ、
遷宮は成り立つのです。ここに到るまでのすべての作業に、そこにたずさわる人の手があります。
 そして、建物を作る木がなければ……、木が育つ土壌がなければ……、雨や光や自然の力が
なければ、なにも成り立たない・・・・・・「適材適所でみんなが主役、無駄なことはひとつもない」
という神道の考え方を、祭儀のはじめから感じられるのです。

 儀式のほとんどは、これまでの20年間使われていた御正宮の垣根の中(御垣内)で行われ、
皇族をはじめとした祭主、大宮司、少宮司など本当に限られた人しか奉仕することはできません。 
 私たち特別参拝の者たちは、垣根の外の席で、新しい御正宮に向けてご神体が出てくるのを待ちます。
 この時間が数時間に及ぶのですが・・・・・・実はこの時間こそいいのです!
 

 日常生活で、これほど長いあいだ大自然の暗がりに座り続けることはあるでしょうか!?
 このときの過ごし方によって、その人が受け取るものに違いが生まれるような気がします。

 灯篭のともる薄暗がりで目をつむり、耳を澄ますと、御垣内での様子をわずかに感じることができます。
玉砂利を踏む音、かすかな声音、そして神様のいらっしゃる御正殿の御扉が「ギ~~」と開かれる音……
その瞬間、全身に鳥肌が立ちました。
 「鳥肌」というのも偶然ではなく、体がなにかに反応しているサインなのだなあとしみじみ感じるのです。
 中でなにが行われているのかはわからない、それでもありがたくて涙が出るという……まさに、
かつて西行の詠んだ歌のとおりの感覚になります。

 そして、闇が深くなるほどに五感が冴えていきます。
 普段より一段と濃く感じる木の香り、虫の音、風の感触……ひとつひとつに「気配」を感じ、
自然現象はすべてが神様だなあと思い出します。

 これからの時代は、この「感じる力」が重要になってくるのでしょう。
 その感じ方に「正解、不正解」はなく、自分自身が感じたものを大事にすること、神の気配(神気)を感じること、
感じられるような心の状態であることだと思います。
 私にとっては、この時間を体感しただけで、充分にありがたいものを受け取ったように感じました。

 そしていよいよ、鶏の鳴き声を合図に、神楽の調べに合わせて、ご神体が新宮に向けて移動していきます。
白い布に覆われたご神体が目の前を横切るこの瞬間も鳥肌……お隣の方も、
腕をさすりながら手を合わせていたのを見ると、それぞれに感じるものがあったのでしょう。
 無事に新宮に入られたあと、全員で二礼ニ拍手一礼です。

祭儀が終わったあと、ホッとしてワサワサ。
  

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 日本のはじまりとされる神様たちが新しい場所に移られたということは、つまり、
日本全体、日本人全体が新しいステージに移ったということだと思います。
 ここで心機一転、新しく生まれ変わったということ・・・それを素直にそのまま受け止め、
「どんなことが起こるのだろう」とワクワクしながら進みたいと思います。
 


2013年10月 浅見帆帆子

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