Diary 浅見帆帆子の日々

November 2010

Vol.2

11月8日(月)

 今、フィレンツェへ向かう列車の中。
 
今朝のヴェネチアはすごい雨で、水路と地面の高さがほとんど同じになっていた。
 
帰りの水上タクシーは、天井を閉めて、おとなしく席に座る。

t-firenze-1.jpg

細長い窓から見る曇った景色が
ママさんのお気に入り。
ほんと、絵みたいだった。


  移動の列車のなかは、数時間あるので、ずっと仕事をしている。
  
途中で飲み物やスナックのサービスがあった。結構、うれしい。一等車は、新幹線のグリーンと同じくらいきれいで
 サービスもいいけど、隣のボックス席の人と目が合うのがなんとも(汗)。
やっぱり、東洋人って少ないから、仕事のため
 にパソコンを開いたりすると、なんとなくチロチロ見られる。日本語が印刷されてる画面に興味がある様子。
  
隣のボックスに座っていたおじいさんに、私がつけているメタルをほめられた。
  
このメタル、フィンランド航空のスチュワーデスさんにも、「どこで買ったの?」と機内でわざわざ聞かれたのよね。
  これは今年のハワイで買ったもので、最近いつもつけているお気に入り。
  
やっぱり、私のジュエリーブランドのはじめのシリーズはメタルのタイプにしようっと。決まり。

  フィレンツェに着いた。ホテル 「SAVOY」は、中心地のとても便利なところにある。
  
ブラブラ歩いて、ポンテベッキオ橋の上にあるジュエリー街へ出かけた。

t-firenze-4.jpg


t-firenze-5.jpg
楽しい~♪ 何度来ても楽しい。
デザインの参考にも^^
t-firenze-3.jpg


 

11月9日(火)

  朝ごはん、このホテルはパンが充実。
 
甘くて小さなデニッシュが……13種類ある。おやつ用にもいくつかいただいた。
 

 外は雨。美術館の日に雨でよかったね、と話す。これはこれでしっとりと落ち着く。

 ところで、美術館の日本語の音声ガイドって、いまいち意味がわからない日本語の文章が多いですよね。
 原文をそのまま訳したという感じで、ひとつの文章が長すぎたり、聞いている途中で意味がわからなくなることが多い。
 
「カインとアベル」とか「イサクの犠牲」とか、「サロメ」など、聖書物語に昔からよく出てきていた絵のお話は、学校での
 基礎知識からあるからわかるけど、ほとんどの絵はガイドを聞いただけではわからない。

 ウフィッツィ美術館……、ママさんは何度来てもここで素晴らしい気持ちになるらしく、
 想像以上にいろいろなことを知っていて、絵や額についてもいろんなことを教えてくれた。

 「私、やっぱり前世ではここで修復士をやっていたんだと思うわ。だって、ママの昔からあこがれの職業が
  修復士だったでしょ? それに、趣味がテンペラの宗教絵画の模写よ? 前世は男性でフィレンツェにいた、
  って言われたこともあるし。」

  たぶん、本当にそうなんだろうと思う(笑)。
  たしかに、
ママさんは、作ったり描いたりもすごく好きだけど、なにかを修理するのが昔から素晴らしく上手で
 好き。たとえばそれは、私のスカートのすそ上げ、というような「お直し」的な簡単なことに始まり、ジャケットの
 ボタンを好きな物につけかえたり、刺繍を直したり……。 
  
見ている側としては、「そういうのは修理屋さんに出したほうが、面倒がなくていいんじゃない?」と思うんだけど
 そういう作業自体が好きなんだって。旅先にも、夜寝る前になにか縫う物、手を動かすものがあると落ち着くんだって。
 変わってる~、と思うけど、そういうのが、前世からの縁ということなんだろう。

  ママさんのおかげで、洋服などで「ここがもう少しこうだといいんだけどな」という部分は、そのままで着たりせず、
 一番好きな状態に工夫することを学んだ。たとえば、ワンピースのリボンだけ取り替えるとか、気に入らないところは
 とってしまうとか、肩ひもをはずして後ろで交差させるなど。
  どんなブランドのものでも「ここがもう少しこうだったらいいんだけど……」というようなことはあるものだ。
  
だから、洋服って、オーダー以外は、自分に合うように手を入れる、というのが普通だと思っていた。
  
なんだか、すごく納得。もし、私自身が修復士だったら、せっせと自分でやったんだろうけど、私は実際に手を
 動かして作るのは向いていないので、そばにいる修理士にあずけるのだ(笑)。

t-firenze-9.jpg  t-firenze-10.jpg

  

11月10日(水)

    ミラノのドゥオーモへ。

t-firenze-18.jpg t-firenze-19.jpg

  晴れたので、クーポラ(丸天上)の上にも登った。フィレンツェのドゥオーモは、私の好きな映画、「冷静と情熱のあいだ」
 の最後のシーンで、あおいと順正が再会するドゥーモだ。

  登りの階段は、上に行けばいくほどどんどん細く狭くなり、
  「この辺で頂上かな? そろそろ終わり? いや、そんなはずない? もしや、まだ先がある?」 という期待を裏切らず、
 限りなく上に続いている。 一番最後はクーポラの丸い部分に合わせて体を曲げながら進む。

t-firenze-6.jpg t-firenze-7.jpg t-firenze-8.jpg

  
                                          頂上♪

t-firenze-15.jpg

t-firenze-13.jpg t-firenze-14.jpg
t-firenze-16.jpg t-firenze-17.jpg

  
 「なんだか……魂が喜んでるってこういうことだと思う」 なんて、珍しくママさんがウルウルしている。
 
去りがたいとはこのこと。 
 
これは、今回のイタリア旅行のベスト3に入る。

  

 午後は、ピッティ宮殿に行った。
 
その中にある銀器博物館を見たかったのだ。
 私たち、こういうものが本当に好き。ひとつの部屋だけで、何時間も過ごせる。
 「この中で、ひとつだけいただけるとしたら、どれにする?」っていう、いつものあの遊びをやった。
 
こういうものを見ていると、なんだか……気持ちが焦る。なんだろう、これ。
 早くいろいろしなくちゃ、という気持ちだ。これは学生の頃からそう。
 ジュエリーや宝飾品の美術館を見ると、いつもこの気持ちになる。

 隣のパラティーナ美術館では、ラファエロの「大公の聖母」と「椅子の聖母」を見た。
 ヨーロッパの美術館って、素晴らしいものが山のようにあって、ひとつひとつを見るのがおざなりになる。
 ラファエロの名画ではなくても、すぐそこにかかっている絵、ひとつひとつが本当に素晴らしい。

 宮殿の奥にあるボーボリ庭園はさらっと見た。
t-firenze-20.jpg

 

  夕方、部屋に戻った途端にすごい夕立。雹も降ってきた。
  
広場のメリーゴーラウンドが雨に濡れて光ってる。でも、空は明るい。

t-firenze-21.jpg

 

t-firenze-23.jpg t-firenze-22.jpg
10分後に光が差し→夕焼け

 

11月11日(木)

 フィレンツェに来てから、曇り空が続いていたけど、今日はスカッと晴れている。

  予約していたアカデミア美術館に行った。
  
この美術館は石像がメインなので(ミケランジェロのダビデ像とかね)、実はあまり興味がなかった・・・
 
ので、暗い展示室にある絵画のコーナーを見てまわっていたのだけど、その薄暗い部屋の角を曲がったら、
 そこに
、なんと! ママさんが10年近く前に、はじめてテンペラで模写した絵の本物があったのだ!! 
  へ~、びっくり。ママさん、大感激。 
  
だってその絵は、ママがはじめて模写した記念の絵画で、当時のママが、絵画集の中から選んだお気に入りの絵
 だった。特に有名なものではないから、それがこの美術館にあるなんて知らなかったのに、こんなところで出会うなんて。
  こういうのって、自分だけにわかる、ものすごい感動の感覚よね。思い出の一枚との出会いだからね。

 

t-firenze-24.jpg

やっぱり,
フィレンツェに縁があるんだね。


  午後は、ドミニコ会の修道士が住んでいた修道院へ行く。
  修道士の各個室にイエスのフレスコ画が描かれている。十字架にかけられたイエスの流血シーンの絵など。
  修道士の世界って、かなりドロドロしてそう(笑)
 
 「神に仕える」という名目を隠れみのにして、人の足の引っ張り合いをしたり、ホモがうじゃうじゃいたり、権力争いが
 頻繁に起こっていたらしい。昔、そういう本、読んだな。

 修道院の中庭と回廊
t-firenze-29.jpg
 
 
  
サン・マルコ美術館からメディチ家の礼拝堂まで歩いて、サンタ・マリア・ノヴェッラ教会に行く。
  世界最古で女の子には有名なサンタ・マリア・ノヴェッラ薬局にも行った。
  香水やポプリの石鹸などを買う。

t-firenze-25.jpg

  
  ディナーの席で、ママさんとしみじみ話す。
  今回の旅行、私にとっては 「ママさんをイタリアに連れてくる来るためにあった」と思う。
  
ママさんが、前世、修復士だったことを思い出すことによって、ジュエリーデザインに対しても気持ちが盛り上がる、
  そのために私がこの旅行をアレンジしたのだろう。
  
だって、ヨーロッパで行ったことのない国に行ってもよかったのに、「なんでまたイタリア?」と思っていたし、
  フィレンツェにもイタリア自体にも、それほど「縁」は感じない。
  たくさんの美術館や街自体の雰囲気を、もちろん素敵だし素晴らしいとは思うけれど、
  それは名画や美術品を見たときの普通の感動であって、特別な感覚は特にないのだ。
  そしてママさんも、これまでのイタリアではなく、今回のイタリアで気付いたことに意味があったんだろうな。

ママさんの前世発見に
乾杯♪
t-firenze-28.jpg


  


2010年11月 浅見帆帆子

ページの先頭へ